「ただいま〜山形さん、起きてますか〜?」

玄関でスニーカーを脱ぐと、居間との仕切りに下げているのれんをめくった。

室内はクーラーがついていて涼しい…

沈みかけの夕日が窓から差し込んでいるとはいえ、暗くなった室内に山形さんが明かりもつけずに座っていた。

カリカリとシャープペンの芯が、一心不乱に何かを書き込んでいく音だけがして、ちょっと怖い…

「山形さん?お腹すきませんか〜?」

床に直接座り、ローテーブルの上にレポート用紙の束が三・四冊のっていて、先程から無言で何かを書き込んでいる…

良く見ると、ヘッドホンをしている…聞こえない訳だ。

邪魔しちゃいけないと思いつつ電気をつけて、洗面所に行って戻って来ると、山形さんが頭を上げて…

「…やあ、お帰り〜声かけてくれればいいのに〜気づかなかったわ〜ごめんごめん…」

と、疲れた顔をして言った。