時刻は十一時五十五分。きっかけは小島の発したこの一言だった。

「ねぇねぇ、池田クン。一緒にランチに行こうよ」

 どうにか『大樹クンを見つめることを止められないスパイラル』から脱出し、デスクに向かって真面目に仕事をしていた私の耳が……ピクンと反応した。

 心情を表現するならば、耳がゾウのような大きさになるほど聞き耳を立てていた。

……ら、ランチ?一緒にランチ?
 大樹クンとランチ!行きたい!私も行きたい!

 大樹クンも「良いですねー」なんて返事をしている。