コンコンッ!

 私が入っている個室にノックの音が響いた。
 このトイレには三つの個室が備え付けられている。
 私がトイレに入ってから、ここに入ってきた人間は――誰もいないはず。
 ということは、このノックは順番待ちをしてている人間のものではなく……私に用件があるものであろうことは容易に想像がついた。

「課長ぉ、調子悪いんですかぁ?」

 想像通り、ドアの向こうから響いた声は私の課の事務員である小島のものだった。
 池田くんへのツンデレ発言と同時にトイレに駆け込んだ私を心配して追い掛けて来てくれたのだろう。

 ようやく身体の震えも収まり、喉の掠れもそのナリを潜めてきている。