Side 霧沢ちとせ


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快晴で雪もなくなった日の朝、けやきの駅までたどり着けたんだけど。



電車を降りるとき、壁についてた鏡を見れば案の定、唇の色が紫がかってる。



息が切れちゃって、一旦休憩。




「はぁ・・・はぁ・・・。」


待合に入るにもしんどくて、ホームの椅子に座りこんだ。



くるしい。


気持ち悪い。



息切れが収まる頃、軽い動悸が起きた。



「でさー、昨日彼氏がー」


「えー?ほんとー?」



ホームを歩く楽しそうな学生たちの声。



俯いたまま、心臓が落ち着いてくれるのを神に願ってるあたし。


吹きさらす冷たい風も楽しそうな声もあたしを孤独にする。



この時限爆弾を抱えてるのは、この中にあたしひとりなんだから。



冷たい指先で、紫色に濁った爪をこすった。