知っての通り、この島は本来、人の住むべき場所ではない。


そこに閉じ込められた島民たちの生活は、悲惨だった。


ケガや病に倒れても、薬もなければ治癒能力を持つ者もいない。


たかが風邪ひとつで、人々は呆気ないほどバタバタと死んでいった。


そんなある日・・・・・・


あの女が島に流されてきた。


信子が。


腹に子を宿したあの女が、この島へと流されてきたのだ。



「お腹に赤ちゃん!? 因業ババ、妊娠してたの!?」


あたしは驚いてお岩さんに聞いた。

でもお岩さんは、沈痛な表情で首を横に振る。


「いいえ。もしお腹に赤ちゃんがいたなら、権田原の民は絶対に彼女を行かせたりしませんわ」


「でも妊娠してたんでしょ?」


「里を出てから、島へ渡る前に起こった出来事なのでしょうね」


「・・・あっ!」


あたしはマロさんを振り返った。

そうだ。そういえばマロさんから聞いたっけ。


『どうせ島流しにされる女だからと、無理やり手を出すヒドい男がいる。

その結果、望まぬ子を身ごもってしまう場合がある』