ヘビ少女は船首ギリギリに立ち、島を見据えている。


乗り出すように前のめりに背筋を伸ばし、彫像のように動かない。


気を集中しているその姿は、航海の安全を守る船首像の女神のようだ。


ヘビ女神に導かれながら、船は真っ直ぐ順調にオーロラの海を進んでいく。


何の問題もなく、島へとみるみる近づいていった。


「よかった。無事に着きそうだね」


「ああ。何も出てくる気配もないしな」


「出てくる? なにがよ?」


「この海の生き物さ」


あたしはちょっと驚いてしまった。


へえ? まさかこんな不思議な海に、生き物が生息できるなんて考えもしなかった。


世の中にはまぁ、ずいぶんたくましい魚もいるもんね。


やっぱり色付きなのかな? 熱帯魚みたく。


「生き物っていうよりも、化け物だけどな」


「・・・・・・はい?」


あたしは思わず浄火の顔を見上げた。


「今・・・・・・なんつったの?」


心の中で、不安の芽がチョコンと顔を出す。


いま聞いた言葉って、すごく重要事項なんじゃなかろうか?


もしかして、海に出る前に、あらかじめ聞いとくべき事項なんじゃなかろうか?