私は園長先生に、結夏さんのストーカーだった人に会ったことを話し始めていた。

私には彼が悪い人のようには見えなかった。

でも実際にストーカー被害を受けていた結夏さんは、きっと物凄く怖い思いをしたのだと思う。


アイスクリームショップでは好感を抱いていた私でさえ、後を付けられた時には震えていたのだから。




 「本当に何も知らなかったようです。結夏さんの名前も、亡くなった事実も」


「ところで、その人の連絡先とか聞いたの?」


「いえ、其処までは……。ただ今日出頭するって言ってました」


「出頭!?」


「はい。結夏さんが亡くなったのなら、自分にも責任があるっておっしゃっていました」


「何か、悪い人ではなさそうね」


「はい。私もそう思いました。あの方はただ結夏さんを好きになっただけのようです」


「でも、後を付けちゃまずいはね。ストーカーだと思われても仕方ないわ」


「その通りだと思います。あの方は自分の行為がストーカーに当たると気付いてはいたのに、止めることが出来なかったそうです」


「何だかその人も可哀想ね」


「はい」

私はそれ位しか言えなかった。
きっと今頃事情徴収されていることだろう。


その後現場検証でもしてもらえたなら……
もしかしたら結夏さんをあの隙間から落とした人物が特定されるかも知れない。

私はそう思っていた。


それは一部の期待。
何としてでも隼を……
結夏さんの御家族を地獄の猛火から救い出してやりたかったのだ。


でもそれが本音ではない。
結夏さんには悪いけど、私は隼に愛されたかった。


本気で抱き締めてほしかったのだ。


それは結夏さんが妊娠していたことを知らなかった私の安易な期待だったのだ。




 あの日ストーカーは、アイスクリームショップで結夏さんがマンションから出て来るのを待っていた。


一目見るだけ……
本当はそれだけで、満足していたのに違いない。
でもその日ストーカーは、結夏さんの後を付け出したた男性に気付いたようだ。


物凄くイヤな胸騒ぎを覚えた。
だから自分も後を追ったのだ。


結夏さんも何時もとは違う殺気を感じたのかも知れない。