ケータイ小説 野いちご

終わりと始まりの物語

さよならのうた

 さよならと伝えられ、ホッとしている自分がいた。
 潮時だったのだ。何もかも疲れている自分もいたし、彼を思いやる気持ちなんてなかった。
 
「じゃあ元気で」

 伝票を手に、彼は一人去っていく。
 その後ろ姿を見てホッとしたはずなのに、不意に湧き出る悲しみや寂しさが胸を支配する。


 お互い、一緒に居過ぎたんだ。
 最初の頃はそれが嬉しくて離れたくなかったけど。
 少しずつ、それは息苦しさを作り、溝が生まれ始めた。
 何かあるとすぐに喧嘩。そうなると修復する接着剤が乾く前にまた亀裂を生むから修復が全く出来なくなってしまった。

 側に居ても、寂しかったのかな。
 分かり合いたい気持ちだけが先走り、口論になってしまったのだろう。
 嫌いじゃなくて、好きだから。



 外は、私の気持ちを別段思いやることもなく、しっとりした暑い空気で出迎える。
 暑くても、周りの恋人は寄り添うように手を繋ぎ歩く。
 そんな姿を滑稽に感じている自分が居て、そんな嫌な自分を吐き出すように大きく息を吐く。


 さよなら、私の恋。
 さよなら、苦しかった恋。


 明日は少しだけ、明るい気持ちになれるかもしれない。


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