永倉様が私の家に来た一年後。

「緑、永倉様が結婚したそうどす」

お母様が私にそう言った。

「永倉様が、結婚?」

「喜んであげてな?」 

お母様は私の頭を撫でながら言った。

もしかしたら、お母様は私の気持ちに気付いていたのかもしれない。

私が、永倉様に恋をしていたこと。
 
多分、お父様がいない私にとって、永倉様はお父様のような存在だった。

娘の初恋は父親っていうし、それだったのかもしれない。