熱いシャワーが降り注いだ。

「トモヒー、悪い事をした。まさか園田さん一家が窓から出るとは思わなくてさ。」
ハッシュはそう言うとシャンプーを手に出し、軽く泡立てた。
そして、俺の頭に乗せ。
ワシャワシャと洗い始めた。

園田さん一家の体液が疲れと一緒に流れてゆく。

高森爺さんをあの家に置いてきてしまったのが気がかりだが・・。
「高森さん、大丈夫かな?」
と、俺が聞くと
「じゃあ、尿まみれの爺さんを交番まで運ぶのか?」
と、残酷な事を言った。

「・・シャンプーを流す。」
ハッシュが言い、眼をつむる。
その中で、冷めた目をした警察官に必死になって妄霊の説明をする自分を想像していた。

「人間って言うのは、自分の都合の良い解釈をする生き物だから大丈夫だよ。老人ホームから抜け出した爺さんが、家に迷いこんで失禁した。それで終わる話だって。」
ハッシュはそう言うと、俺の背中を流しはじめた。

「トモヒー、君は戦いの素質がある。ショウジョウになる前に妄霊を叩き伏せろ。そして、俺の背中を守ってね!」
ハッシュは、優しいのか強いのか分からない口調で言うと、洗面器で体の泡を流した。
「熱っ!!」

洗面器のお湯があまりにも熱くて飛び退く!
「あははははは!」
ハッシュは笑い、抱きしめてきた。
男の肌と肌が密着して気持ち悪い!

「気持ち悪いから辞めろ!」
そう言うとハッシュは残念そうな顔をして離れた。

「・・それでどう?やれるの?」
ハッシュが心配そうに聞く。
やれるって言うのは妄霊退治をだろうか?

俺は
「やるよ。ハッシュだけじゃ心細いでしょ?俺は俺で頑張るよ。」
と言った。
園田さん一家と闘う前のハッシュの顔を見たら放っておけなかった。
今まで彼は、暗闇のなか1人で闘って来たのだ。
自分は自分の出来る精一杯の事をしよう。
そう思ったのだ。

「ありがとうトモヒー!」
「だから、もういいって!!」

ハッシュが抱きつこうとしたので、風呂場で取っ組み合いになった。
俺らこんな事して大丈夫だろうか?
そんな事を思った・・。