【想乃side】



会話が飛び交わない家族3人での朝食。


テレビの音だけがリビングに響く。


こんなの慣れたつもりでいたのに……


今のあたしには痛過ぎる。



その内、何も言わずにパパが立ち上がりスーツのジャケットを羽織り仕事に行ってしまった。


その数十分後、パパの分の食器を片付けるママも仕事のカバンを持ち上げた。


「想乃。仕事行って来るわね。アンタも気を付けて行きなさいよ」

「うん……あたしは大丈夫!」

「毎月口座にお金入れとくから。それ使いなさいね」

「…はい」



ガチャっとドアの閉まる音。


一人で家に取り残されたあたしと、隣に置いた大きなキャリーバッグ。


今日は高校の入学式なんだけどな……。


誰も来てくれないみたい。


それに住み慣れた家を出て、一人暮らしも始めなきゃ。


これも全部、あたしのせい。


あたしが、全部悪い。


ママとパパが喜ばないのは、あたしが悪い子だから。



「そろそろ行かなきゃ……」



真新しい制服は嬉しいものじゃなくて、悲しくなる。


行って来ます………。