「美味いサンドイッチを出すカフェがあるんだけど、そこでいいか?」

朝食を外で食べたことのない私は、大登さんの提案に「はいっ」と飛びつく。

カフェで彼氏とサンドイッチ……。二次元の世界でもそうそうお目にかかれないシチュエーションに、期待は高まるばかり。

しかも大登さんはいつものスーツではなく、初めて見る私服姿。黒のスキニーパンツにグレーのパーカー、その上にステンカラーコートをはおったラフな姿に親近感すら湧いてくる。

でも今日の私は……

「昨日と同じ服だよね」

皺のよれた服を見て、ため息をつく。

酔ってはしゃいで記憶をなくして大登さんの家に泊まったんだから、しょうがないんだけど。せっかくカフェに行くっていうのに、通勤服なんて……。

普段はお洒落になんてまったく興味がないのに、何故か今日にかぎって気になって仕方ない。

一度アパートに戻って着替えたいところだけど、いかんせんここは大登さんのマンションで、アパートに戻る時間なんてない。

仕方なく大登さんの後ろについてマンションを出る。もう九時を過ぎているというのに外はまだかなり冷え込んでいて、身体を震わせると冷たい手を擦りあわせながら辺りを見渡し足を止めた。

「え?」

ここって……。

見たことのある街の風景に、足早に階段を駆け下りる。クルッと一周見渡せば、時々買い物に行くスーパーが見えた。