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(.........ユニ...コーン.........)


 
 嘘かと思った。信じられないと。



 実際にこんな生き物がいるなんて、もはやこれは、この世界を私の常識の範囲内で見ることは無意味なのかもしれない。



 目の前に広がる光景に呆然としながら、ルミは素直にそう感じていた。



 土や泥で多少汚れてはいるものの、太陽の光を浴び、キラキラと輝く真っ白な毛並みや、僅かにねじりのかかった絵に描いた様に立派な角。



 凛々しく、神々しさすらかんじさせるその姿はやっぱり人が住む世界に不釣り合いな気がした。



「どういう事なんだ!?
自分達が何をやっているのか分かっているのか!!?」



 オーリィさんが今までにないほどに声を荒らげて男の人たちを怒っている。



「こっこれには、深いわけが.........」



 お頭と呼ばれていた男が必死に弁解を口に出そうとする。



 しかし、余程オーリィさんの逆鱗に触れたのだろう。



 聞く耳を持たないと言ったふうに、険しい表情を崩さず男の人達を睨みつけていた。



 きっとこの人達にも言い分はあるのだろう。



 私には、一度村を救ってくれた恩義からあんなに頭を下げてオーリィさんに感謝の気持ちを告げようとする彼らが、わけもなく美しい一角獣を捉えているとはどうしても思えなかった。



「......オーリィさん、聞いてあげましょう」



「え?」



「よそ者の私がどうこう言えるとは思っていませんが、彼らが悪い人には思えません。深い訳があるとも言ってましたし、ここは一旦あの子の縄を解いてあげてから、この方たちの話を聴くというのはどうでしょうか?」




 ・・・・




 ここに来て初めて、無言の時間が広がった。



 あくまで中立。



 けして誰の味方をしているわけでもなければ相手を卑下するわけでもない。



 これまでの話に一切関与してこなかった一人の少女の言葉は、大の大人たちの心に何の抵抗もなく入っていった。



「あなた様は.........」



 今までオーリィさんしか目に入っていなかった男たちは突然現れた少女に驚く。



 何よりもその美しい容姿に。



 そんなこと自覚していないルミは男の問に正直に答える。



「......ルミと言います。訳あって、オーリィさんのお世話になっている者です」



「そうでしたか、......しかしお美しい...」



「はい?」



「まるで天女のようだぁ......」



「は!?」



 まるっきり違う方向に逸れそうになったところで、オーリィさんがジロりと睨みをきかせると男の子達はぐっと黙った。



「...はぁ、まあルミちゃんの言う通りかな。とりあえずあの一角獣の縄を解いてから......」



 そう言いながらオーリィさんがユニコーンに近づこうとした時。



「!!!オーリング様っ、だっだめです!!」



 お頭さんが大声で叫んだ。



 オーリィさんが怪訝な顔で顔で彼を見つめる中、お頭さんの口から思わぬ一言が出てきたのだった。



「その一角獣は.........
人を......人を、殺したんですっ!!!」