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「...よっ、と!!」



 バシャッ!



「スゴイ......」



 河原でまだまだ元気良くはね回る魚たち。



 その全てをオーリングは、釣竿を使うことなくわずか数分という短時間で捕まえた。



 勿論、魔法、を使って。



 それはとても綺麗だった。



 彼は腕を伸ばし、人差し指をくいっと上に向けて曲げる。



 それと同時に水面から魚たちが飛び出す。



 そしてその魚たちはそのまま落ちていくのではなく、水を纏ったままオーリングの周りを泳ぎ続けるのだ。



 本当に綺麗だった。



 釣り上げたその魚たちを美味しくいただきながら私は、その時の現実とは思えないほどの美しい光景を思い返していた。



「俺の魔法は楽しんでもらえた?」



「はい。とても」



「そう!よかった!!」



 にこやかに、本当に嬉しそうにそう言うオーリング。



 それでも謙遜なのか苦笑いで控えめな言葉を並べる。



「実はあんまり派手な魔法は使えないんだけどね!王都に向かえばもっとすごい魔法使いがいっぱいいるから、まぁ、楽しみに待っててよ!」



「あ、はい...
あの、王都って.........私も行っていいのですか?関所か何かがあるんじゃ...」



 そうだ、私は、どういう訳か別の世界の人間。



 王都といえば、国王様が住む都のことに違いない。だとすれば一層厳しい関所が準備されているはず...



 私のような存在自体が不確かな人間が通れるとは考えられない。



「あ、そこは大丈夫!」



「?」



「言ったろ?
俺は君を守れるくらいの力は持ってるって。もちろん、全ての面においてね!」



 さっ、明日に備えて早く寝よう、寝よう!



 カバンから寝袋を出しながら変わらぬテンションの高さでそういうオーリング。



 (寝袋とかは魔法で出さないのね...)



 と密かに思ってしまったことは黙っておこう。



 そのまま半ば強引にオーリングの持っていた寝袋に寝かされ、長いようで短い夜が終わった。