沖田さんに連れられ、俺は部屋に通されて、整頓された殺風景な部屋に驚く。


姉ちゃんの部屋とはまるで違う。


折り畳んだ着物が部屋の隅に置いてある。

小さな手鏡が文机に1つ、ちりめんの布に包まれている。
些末な貝殻は、紅入れだと思った。


「翡翠くん、着替えが終わったら声をかけてね。
京都のお茶淹れて飲もうか。
お饅頭がないのは残念だけど」


「ありがとう、……ほんで、着物汚してもうてすんません」



俺は、いつおまじないが切れるか不安で、目を合わせられずに言う。


沖田さんは「気にしない気にしない」と歌うように言いながら、部屋を外した。


袴に足を通し、上まで引き上げ腰を締めると、気持ちまで引き締まる。



竹刀を振りたい


突き上げてくる思いと、1本を何としても取らねばという思いが頭の中を交錯する。