俺、翡翠信太。

剣道部主将。


自分で言うのも何だが、俺はモテる。


長身で180センチとか、言わない。

175センチ。
デブでも、痩せてもいない。

細マッチョ?くらい。


容姿は上々、成績も申し分ない。


竹刀を振るたび、騒ぐ黄色い声が部員たちの集中力を欠くのが嫌いだ。


ピーピーキャーキャー、うるせぇ!!


叫びたくなる。



「翡翠くん」


甘い声で呼ぶな。きっしょい。

半径30センチ以上、近づくな。



……と、鳥肌が立つ。


「ねぇ、翡翠くん」


「何やねん」


――顔が近い。
何でそんなに接近してんねん


「教科書、逆さま」


「あ……」


隣の席の女子の顔も、まともに見ることができない。


鼻の辺りが生温い。


思わず手を当てる。