一色佐波(いっしきさわ)、28歳。
旧姓・梅原佐波。


私が予想外の妊娠に気付いたのは昨年の11月のことだった。

お相手は直属の上司にして、鬼のように厳しい男・一色禅(いっしきひとえ)。
恥ずかしながら、お酒の上での一夜の過ちだった。

授かった命を堕ろすことも出来ず、ひとりで育てようと考えていた私に、鬼上司は「子どもに責任をとるため結婚しよう」とまさかのプロポーズ。

命を肯定するための結婚。
それが、私たちが夫婦になった最初の理由だった。


一緒に暮らすうち、お互いの気持ちに触れるうち、私たちには淡い恋が生まれる。
戸惑い、喧嘩もし、たくさん悩んだけれど、お腹で育つ小さな命が私たちを家族として結びつけてくれた。

そして十月十日の夫婦育てを経て、私たちの元にやってきてくれた可愛い女の子。

これが私たちの結婚の顛末……。


痛~い出産はまた別なお話として、
予定日から随分遅れてでてきた私たちの娘・みなみは本日生後1ヶ月を迎えていた。


*****