文化祭からほどなくして、僕は学校へ通えない程に衰弱し始めた。


ミミズ腫れはもう隠せない範囲に拡散し、顔にまで進行し、もう、明るい外を歩ける状態ではない。


体中が痛くて、息をするのも苦しい。


たまに調子の良い日は父の工房を覗きに行ったり、妹にヴァイオリンを聴かせる事も出来るが、生きる時間の殆どはベッドで読書をするばかりだ。


最初こそ、躍起になって恋した相手を吸血しなさいと言って来た両親も、僕の決意が固い事を悟り、もう何も言わない。


今もこうして、父が作ったヴァイオリンを目の前で弾いてみせる僕を、穏やかに見つめるだけだ。


「うん。良い音だ。迷いの無い澄んだ音をしている。腕を上げたね、エルザ」


もし僕がこの運命を選ばずに生きていたら、きっと父のような中年になっていたのだろう。


その、僕とそっくりな顔でだけども僕と違う人生を重ねた皺のある目尻が、皺を深くしてやんわりと孤を描いた。