次の日、玲香ちゃんは内田くんの言った通りに学校へ来ていた。


終始不機嫌そうな顔で。
無言で席についた彼女に話しかける勇気は、私にはなかった。


……すっかり臆病になってしまった。



『おはよう、玲香』



すこしかすれていて、ハスキーな彼の声が、丸みをおびている。

優しさがにじみ出た挨拶に、なぜか私の胸が痛んだ。


……私に内田くんから挨拶してくれることは、もうないんだ。


そんなことを思うと、とてもじゃないけどテンションなんか上がらなかった。



「ーー川口?川口ってば!」


「…!?あ、え?早瀬くん……?」


「ぼーっとしすぎ。昼休みだけどどうする?」



早瀬くんの言葉に窓の外を見た。


……最近ずっと雨ばかり。


6月に入って半ば、ニュースで梅雨入りしたことを知った。