***



「あ、めい子ちゃん。今日も図書室来る?」

「う、うん……! あの、私、掃除……あるから……、」

「わかった、先に行ってるね」

「……ありがとう、汐田くん」



それだけの会話をするだけでも、すごく緊張する。


だけどあの日から1週間、少しだけ汐田くんと仲が良くなった。


私に軽く手を振った彼は、階段を下りて視界からすぐにいなくなる。



――これでも、汐田くんのくしゃっとした笑顔に、遠慮がちに微笑み返すくらいには余裕ができてきた。



……その代わり、結局サクロとはあの日以来一言も口を聞いていないけれど。


この1週間は、昼休みと部活が休みの日の放課後は静ちゃんのいる図書室に通うサクロに、もやもやして過ごす毎日だ。


その彼と合わせて、私も汐田くんに甘えて図書室で過ごしている。


汐田くんの隣で、彼の仕事のお手伝いをしながら、サクロを監視している姿は、自分でも異常だなって、気付いてる。



……いい加減、こんなんじゃだめだとは、思ってるけど。


サクロに謝るタイミングがわかんない……! だってずっと静ちゃんといるんだもん……!