***
「――メーコちゃんっ!」
「……」
「メーちゃん?」
「……」
「ねー、メーちゃんっ」
「……」
しきりに私の周りをちょこまかと回りながら、様々な声のトーンで名前を呼び、何としてでも気を引こうとするサクロを無視し、そそくさと女子トイレへ避難した。
……何度か気が緩み、いつもの癖で返事をしそうになってしまった。
「……まだいるよ、サクロ」
私より少し遅れて入ってきた七海ちゃんが、呆れ半分で教えてくれる。
「七海ちゃん……」
「泣きそうになるくらいなら避けんなってーの」
「だってぇ……」
どうしたらいいか分からず頭を下げて靴のつま先を見れば、ぽんぽんと七海ちゃんが私の頭を撫でた。
「何があった? めい子、朝からずっと佐久路のことシカトして」
「……」
「まあ、言いたくないんならいいけど。さっき隣のクラスの転校生ちゃんと親しげに喋ってたよ」
「えっ……!」
にやりと笑った七海ちゃんは、全てを分かっているようでなんだか怖い。全部ばれてる……。