ーーキーンコーンカーンコーン。


いつも通り授業が終わって黒板の文字を消しに前へ行く。

もうすっかり日課になったこの行動も、この前の高橋くんの言葉でやる気が湧いて来る。


見て、くれているんだってそう思うと頑張れる。



「私もやるね」



そう言ってもうひとつの黒板消しを手に取ったのは沙月ちゃんだった。



「ありがとう」


「ううん!」



沙月ちゃんとはこのクラスで誰よりも仲良しだと胸を張って言える友だちになった。

この前のことはより一層仲を深めてくれた出来事となって、私の思い出の記録として残った。


今まで友だちと呼べる存在がいなかったから知らなかったけど、友だちっているだけでそれだけで勇気に変わるんだね。


沙月ちゃんがいるから頑張れることがたくさんあるよ。


授業で先生に指名されても沙月ちゃんの顔を見たら頑張れるの。


あんなにイヤだった発表も、少し、自信を持ってできるようになったんだよ。


他のクラスメイトとも、まだぎこちないかもしれないけれど、話せるし。



「うう……!」



と、届かない……!


黒板の上の方に書かれてある文字に手が届かない。


ふと、その時。



「貸して」



ヒョイっと私の手から黒板消しを奪ったのは……。




「たっ、高橋くん」



高橋くんだった。