ケータイ小説 野いちご

悪夢

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暗い路地裏。
人通りは滅多に無く、
風がただ通り抜ける。
街灯もぽつん、ぽつんと
2、3あるだけで、
消えかけているものや、
完全に消えてしまってるもの、
整備なんてされていないことは明白だ。
それ以前に誰も使うことはない。

こんな場所に、体格からして男だろうか?
闇に溶けるように真っ黒なフードを
目元まで深くかぶり、
微動だにせず立っている男がいた。
何をするわけでもなく、
ただ静かに、
目の前にいる"俺"を見ている。
ただただ無表情で、
じっと…

"俺"は何故だか目が離せない。
フードで目なんか見えないはずなのに、
『こっちを見ている』のが分かる。
「…(ボソッ)」
その男の口が動いた。
小声で何を言っているのかは分からない。
でも聞きたくない、聞いちゃいけない、
そんな気がした。
「…(ボソッ)」
男はその言葉を呟きながら
"俺"に近付いてくる。
近付いてきて欲しくないのに、
手足を動かすことが出来なかった。
「…………イ…(ボソッ)」
その声はだんだん大きくなる。
この言葉を聞いたら戻れない気がした。
何処にかは分からない。
でも、何処かに戻れなくなる、
そんな気がした。
「…………ダ…(ボソッ)」
ついに男は"俺"の目の前にまで来た。
その時ふいに風が吹き…


男のフードが脱げた。
「っ…!」
フードの下、
髪は黒のショートで頬はやせ細っている。
口唇には生気がないように
紫がっかており、何より…
目が、無かった。
目があるべき場所は真っ暗で、

なのに『こっちを見ている』。

「っ…!!」
誰かに助けを求めようと口を開くが
声が出ない。
逃げようにも足が動かない。
なんで…!なんでなんだよ!!
動け!動けよ…っ!!
必死にそう念じてみるが動かない。
その時"俺"は
一瞬男から目を離してしまった。
瞬間目の前から男が消えた。
何処に行ったのか辺りを見渡す。
男は……………
いない。
ホッと詰めていた息を吐こうとした瞬間...

背後に気配を感じた。

恐る恐る振り返ると…
先程の男が立っていた。
「っ…!」
やはり声は出ない。
足も動かない。
それどころか
ついさっきまで動いていた首や体、
目すらも動かない。
目の前の男は口を開く。

「オマエノセイダ」

"俺"の意識はまるで
テレビの電源が消えるかのように
プツンッと途切れた。
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