もしかしたら話せるかもしれない。もしかしたら、彼女の声を聞けるかもしれない。そう思ってもう一歩踏み込んでみた。
「担任に相談してみない?」
 提案すると、彼女は困った顔をした。
「気持ちだけ、ありがとう。……私、大ごとにはしたくないの。家に連絡されたらお父さんやお母さんに心配かけちゃうから……。だから、ごめんね、ありがとう」
 そうして、また瞳がグレーに戻る。
 暗に、「担任には言わない。これ以上この話はしないで」と言われた気がした。
 家に連絡をされたくないのは、家族に心配をかけたくないからだったんだろうか。自分の状況を知られたくなかったんだろうか。
 それとも、大ごとになってクラスでの立場がより悪くなることを避けたかったんだろうか。
 本当はどっちだったんだろう。どっちも、だったのかな……。