合同会議が終わって翠に声をかけようとしたとき、翠は何かに気づいたような素振りで携帯を手に取った。いくつかの操作をしたあと、ディスプレイを見てわずかに表情を緩める。
 俺には、とても嬉しそうに笑っているように見えた。
 友達からのメールかもしれない。けれど、秋兄からのメールだろうか、と思う自分もいた。
「翠、図書室に戻って明日の賞状の枚数チェック」
「あ、はいっ」
「メール?」
「うん」
「……秋兄から?」
「ううん、鎌田くんから」
 意表をつかれるとはこのことか……。
 鎌田とは、翠の中学の同級生。去年、紅葉祭に来て再会を果たしたようだが、初めて会う俺ですらわかった。翠のことが好きなんだと……。だが、そのことに翠が気づいているかは怪しい限りだ。