「で、何で僕がおごらなきゃいけないわけ?」


僕は空になった財布をアカネの目の前で振りながら言った。


「何も食べずに長い時間居座るわけにはいかないですぅ」


「だからって、限度があるでしょ」


満面の笑みを浮かべるアカネの前には、山のようにハンバーガーが並べられている。


両手にハンバーガーを持って笑顔で食べる姿は、どこぞやのフードファイターのようだ。


「求人情報誌がファーストフード店に置いてあるって言ったのは新田智則ですぅ。あたしはしかたなく食べてるだけなんですよぉ」


「しかたなく山ほど食べられたせいで、僕の全財産が消えてしまったんだけど。一個貰うよ」


僕がハンバーガーに手を伸ばすと、アカネがその手を弾き返した。


「な、何で!?」


アカネが僕との中間に魔法で線を引いた。


「この線からこっちはあたしのテリトリーですぅ。入ったら新田智則の服の色を全部消すですぅ」


「……恐ろしい」