赤ちょうちんを掲げた寂びれた店は、焼き鳥の香ばしい匂いと自慢の備長炭の煙に満ちている。

「はぁ~」私の小さく漏らしたタメ息は店内の喧騒に紛れ込んだはずだった…

「何?…また何かあったの?」面倒臭そうに声を掛けてきたのは、高校時代からの友人

朋(トモ)は辛辣な物言いはするけれど絶対に嘘は吐かない

私が最も信頼を寄せている人

焼き鳥の串を掴み豪快にかぶり付きムシャ、ムシャと咀嚼する様は正に男前

無駄な贅肉を削ぎ落としたようなスレンダーな体型で長身の朋は、ショートカットが良く似合う

切れ長の涼しげな瞳で見つめられると女の私でも思わず赤面しそうになる
クールビューティーな私の親友

これで少々愛想が良かったら相当モテるはずなのに…

不愛想でバカ正直だから怖がられて男が寄り付かない。

(勿体無いなぁー)

そう思いながら朋の顔を見つめていたら

「何…人の顔見つめてるの?気持ちわるっ」

朋の言葉に少々落ちも込みながら思考を引き戻しタメ息の訳を話し出す