「えっと・・理解した?」
「理解するとか、しないとかのレベルじゃないでしょ・・?」
俺は呆れて言った。

昼の相模川の河川敷。
ハッシュの言ってる事は、まさに奇想天外だった。
因みに本名は
ハッシュでいいじゃん?
と、言われるばかりで教えてくれなかった。

「じゃあ、もう一回説明するよ?トモヒー?」
「はぁ・・。」
ハッシュは石灰の石でアスファルトに書き始めた。
因みにトモヒロと名乗ったら、トモヒーになった・・。

「ここに一人の人間が居たとしよう。人間は、2つの物質で構成されているとする。」
「はぁ」
「一つは、物体としての『人間』。もぅ一つは・・」
もう一つは『気体のようなもの』らしい。
その『気体のような物』を『魂』や『心』と言う人もいるが。

物体としての人間を器にして、気体としての人間が入る事で一つの生物として成り立っているらしい。

その調和が崩れたのが『妄霊』だと言うのだ。

「・・つまり、幽霊ってこと?」
俺は、ハッシュに聞いた。
「殺される瞬間に、物体としての調和が崩れて焼き付いたのを幽霊と呼ぶが・・。違う。」
「じゃあ・・人なの?」
「人とも、幽霊とも違う状態が妄霊だな。」
「なんだよ、ソレ?」

ハッシュと目があった。
それ以上の説明のしようがない。そう言っていうようだった。

「ヤビツ峠の山中に制服姿の妄霊が出たらしい。明日の夜、やれるか?」
重い沈黙の中、ハッシュが切り出す。

何か危ない事件に巻き込まれているような・・そんな気がした。