「お疲れサン。」
「・・何やってんだお前。」
それから裏ヤビツの暗闇をトボトボ歩いた。
ハッシュは、どこにいたと思う?
車に乗って携帯をいじっていやがったんだ。

「初仕事、お疲れサン。圏も、もうすぐ消えるだろう。受けた傷は、圏から出れば空想の産物にすぎない。さぁ、お風呂に入ろう?」
「・・・。」

俺はヤビツ峠を抜けて市街地に出ても尚、黙っていた。
コンビニ寄るかと聞かれてもシカト。
何より殺されかけたんだ。
ハッシュはその間、車で俺を待ってやがったんだ。
ふざけんな。

「背中流してやるよ。知り合いにソープ嬢の彼女がいる奴がいるんだけど。彼女が帰るとこうして、体を洗ってあげるんだってさ。」
「・・・。」
それからなぜか自分の家の風呂場でハッシュに背中を流してもらった。
傷は血がついているばかりで傷口が無かった。
まるでさっきの出来事が嘘のような気さえする。