試合の決着はつかなかった


本気だそうか迷ったけどやめておいた。



だってこんなに人がいるなかで沖田を叩きのめすのは、沖田の名誉にかかると思ったから



コートから出るとき、沖田にふと言った




志乃「あんた、なかなかの腕だね。
久しぶりに楽しませてもらったよ。ありがと。」




ぽかんとしている沖田の腕を引っ張り上げて立たせると、自分はさっさと切り上げた


志乃「審判おつかれさまです。


……藤堂さん、長いこと審判させて悪かったです。



……試合は……また今度でいいですか?」





突っ立っている平助の肩にポンと手を掛けて、ねぎらいの言葉をかける



いやー、しかし残念。




あたしにとって決着のつかない試合なんて初めてだ。




それに





まだあいつは本気ではなかったはずだ




志乃「(おっそろしいやつ〜……)」




わざとあたしの攻撃をくらっていたのだとしたら?


あたしの体力の限界が来るその時を狙っていたのか?


……そのこともふくめて、今度の試合でわかるさ……



平助「いいえ〜!



……にしてもすんげー試合だったな!


俺、あんなにドキドキする試合って中々見たことないからさ!」


ほんとうに、平助は心の底からの笑顔で語っていた


志乃「そんなに凄かったかなぁ……」


平助「凄いなんてもんじゃないよ!!

見ててハラハラした!!!



……てか、ワクワクする試合だった!!」



今度は俺とな!と言いながらあたしに手ぬぐいを渡して、「それで汗拭きなよ」と言った



さっきまで汗の一つもかいてなかったが……



疲れからかな、うっすらと額に汗が浮いていた。



志乃「ありがと。気が利くね。」


両手でそれを受け取り、感謝の言葉を述べつつ


志乃「これ 洗って返すから。部屋教えてもらったら渡しに行く。」



と、周りの隊士たちとは目を合わせないように早口に用件を言うと、道場を後にした。