カッカッカッ。

京の夜の街を歩く、一人の女がいた。

長い髪を後ろでまとめ、大きな切れ長の目は人を寄せ付けない雰囲気を放っている。

ぷっくりとした赤い唇に白い頬。

美しいのに、自分を前に出し過ぎない美しさだ。

今が昼であれば、きっと一度は皆振り返るだろう。

しかし今は夜だ。

人通りの少ない夜には、旅用の杖の音が大きく響く。

そして人通りの少ない夜には

「今晩は、お嬢さん?」

怪しい男もいる訳で。