HRも終わり、クラスの皆が部活や帰る支度をする中、私はぼうっ机に突っ伏して窓の外を見た。
青空の中に白色や灰色の雲があちらこちらに広がっていて、お世辞にも綺麗な空とは言えない。
ひどく暑かった夏も終わり、空の雰囲気や気温がどんどん秋に近づいていく。
どこか寂しい、そんな景色に思わずため息が溢れそうになったそのとき、首元に突然ヒンヤリしたものが当たった。
「うわっなに!?」
冷たくなった首元を抑えて振り返ると、そこには驚いたような顔をした峰が立っていた。
「でかい声出すなよ、びっくりすんだろ」
「びっくりしたのはこっちなんですけど……」
少しだけ濡れたような気もする首元を摩りながら、ジッと峰を睨む。
「そんな驚くとは思わなかったからさ」
峰は少し笑いながら、あたしに冷たい缶のミルクココアを渡した。
「わっ、ココアだ。どうしたの?」
「いや別に、気分」
「なにそれ」
そう言いながらも、ありがとう、と言って峰からココアを受け取った。
彼は峰こと、峰涼太。
峰とは高校に入ってからの仲になる。2年生に進級するときにクラス替えがあったものの、峰とは同じクラスのままだった。
なんとなく、何も気にせずに一緒に居られる。峰はわたしにとってそんな存在。
だけど、峰は高身長で顔も整っている方で、少し近付き難い印象があったから最初の印象は“仲良くなれなそう……”なんて思っていた。
話してみると確かに無愛想で、実際ちょっと意地悪だけど、なんだかんだで優しいところがあるから嫌いになれない。