早川先輩はあたしを起こしてドレスについた砂を払って、しっかり上着を着せると、ゆっくり歩き出した。
きっとばれてる。
あたしが早川先輩のこと好きなことくらい。
時には言葉なんかより、スキンシップの方が伝わっちゃったりするだろうし。
早川先輩に求められたさっきまでのあたしは、先輩でいっぱいだったから。
それでもあたしは、先輩を突き放した。
ひどい言葉で。
「寒くない?」
「…はい。」
それなのにあたしに優しい先輩に、もうどうしていいかわかんなくて。
なんの涙なのか、音もなく両目から流れ出したそれにあたしはただばれないように俯くことしかできない。
泣くのはあたしじゃないのに。