聖カナン女学院。


隠飛羽の中でも特に高い偏差値、高い学費、高い教養、そして由緒正しい家柄を求められるこの学校には、生粋のお嬢様達が集まっている。









「それではこれにて本日の授業を終了と致します。御機嫌よう。」



御機嫌ようと生徒達は一礼する。





「烏丸さん、今日なのですけど……あら、急いでいらして?」

「ええ神宮寺さん。ごめんあそばせっ!」


急いで荷物を鞄にしまい、教室を出る。






先輩には立ち止まって挨拶しなければならないというしきたりと

可憐に振舞わなければならないという校則で、私は目的地につくまでに相当の体力を消耗した。




目的地、3階生徒会室。


ノックをして扉を開ければ、まだそこには誰もいない。



「てことは、廊下ね。」




私は三年生教室から生徒会室への一番近道の廊下へ向かった。

向かっている途中、女の子達のきゃあきゃあという黄色い声が聞こえる。





「あ、天音様っ。」

「どうしたの?子猫ちゃん。」

「今日も、す、素敵ですわ……。」

「ありがとう、でも君の方がもっと素敵だよ。」




そう言って長身の麗人は笑顔を向ける。

話しかけた女の子はへなりと倒れてしまった。




サラサラのショートカットに凛々しい顔立ち。

身長180cm、ハスキーボイスの通称聖カナンのプリンス。




副会長、北原天音(きたはらあまね)、三年生。




「間宮さん、大丈夫ですの?!」


「誰か保健室に運んで差し上げてっ!」





倒れた女の子を他の取り巻きたちが介抱しているスキを見計らって、私は天音先輩に話しかける。



「天音先輩。」


「はい、子猫……かと思ったら初伊だった。こんにちは、志乃はまだ教室にいるよ。」