◇



「……あ、マリアちゃん!」


魁さんが応接室の扉を開けると、視線がばっちり合った慧さんが、いち早く私に気がついて反応した。


「やっと、目が覚め……わっ!」


「おはよう、マリア」


慧さんがソファーから立ち上がろうとしたところで、それを阻止するかのように立ち上がったのはマーク兄さんで。

その動きに驚いた慧さんは、びくっとしてソファーの隅に飛び退いた。


「……マーク兄さん」


「何をご立腹なのかな? うちのお姫様は」


目の前まで歩いてきたマーク兄さんをジト目で見上げれば、私が怒っている意味が分からないのか、首をこてんと傾げて聞いてくる。


「私の洋服……」


小さな声で呟けば


「あぁ。その服も、よく似合っているよ」


分かるように言ったのに、笑顔のマーク兄さんからは見当違いな答えが返ってきた。


「……………………」


ちっが─────う!!

私が聞きたいのは、そんな言葉じゃありません!!