話は、あの事件にまでさかのぼる。



2人の思いがかなってめでたしめでたしで済むはずがないのだ。


まず、彼らは一度無になったが、流石にリルもそのままにしておくほど非情ではない。


当初の予定のとおりルイに貿易会社を継がせ、新しいヒューアス家の戸籍を用意した。


ヒューアス一世となった兄弟は二人仲良く会社をささえていくことになった。


いつまでもメイのために日本にいたルイだったが、兄がどうしても彼の腕が必要だと泣きつき。


仕方なく一一すべてを捨ててカサンデュールに帰ることが決まった。


もちろん、メイをつれて。



「おはようございます、ルイさま、メイさま」

コックがいい笑みを浮かべてシフォンケーキを差し出す。

ルイはサラダやスープがついているが、そんなに食べきれないメイはシフォンケーキ単品である。


「わぁ！おいしそーです！ルイ、早く食べましょー！」


見えない尻尾を振って食卓についたメイに笑いながら、ルイもつく。

いただきますと二人合わせて言ってから、食事は始まった。


「……コック、今までありがとう」


「いえいえ、この家で働けて幸せでしたよ。メイさま、ちゃんとこれからもご飯食べてくださいね」


「ふぁいです」