この屋敷には、使用人が近付いてはならない部屋がある。

と、言うと化け物じみているが、なんのことはない。



部屋には少女がいるだけなのだから。



ルイは屋敷の主であるにも関わらず、朝っぱらから食事を持ってその部屋に向かった。

使用人を使わないのは、彼女に会わせたくないから。

独占欲が並々ならぬ強さなのだ。


ノックもせず、豪奢な飾りのついたドアをあける。


「メイ、起きろ」


命令口調だが優しくて、愛をひしひしと感じる。

その言葉はピンクの天蓋つきのベッドを膨らませている彼女に向けられていた。


「メイ、起きろ」


再度繰り返したのは起きないから。

「ぃやぁ、です…」

ぐるんと寝返りをうって。


「…寝ててもいいじゃないですかぁ…」


「ダメに決まっているだろう?
朝に弱いなど恥さらしもいいところだ。夫が早く起きるなど、カサンデュールではありえないことだぞ?そもそもお前は「ご主人様うるさーい…です」

聞いてると眠りたくなるほどの言葉を聞かされ、ウザくなるのも当然だ。

これ以上聞くより起きた方がマシ、と彼女は目を擦りながら起き上がった。