なにも見えない。

なにも聞こえない。

声も、出せない。


自分の心が生み出す闇の世界の中で、あたしはずっと苦しみ続けていた。


だってあたしは、失ってしまったから。


この世界で一番大切なキミを、失ってしまったから。


大切な大樹(たいき)が・・・死んでしまったから。




大樹が死んだ。

大樹が死んだ。

大樹が・・・死んだ。


その恐ろしい言葉と現実が、あたしの心を容赦なく叩きのめす。


襲いかかる絶望感に身体が耐えきれず、何度も繰り返し吐いた。


ずっと部屋に閉じこもり、枯れるほど泣いて、泣き続けて。


でも涙はとまらず、深すぎる悲しみは決して消えない。


暗闇がスルスルと手を伸ばし、あたしをどこかへ引きずり込もうとする。



気が狂いそう。


怖い。怖い。怖いよ。


大樹、大樹助けて。


あたしを守るって、誓ってくれたよね?


あたしを・・・あたしを助けてよ・・・。



その時、窓から差し込む月の光りを受けて、机の上の何かが光った。


まるであたしの心の声に答えてくれるように。


(あれは・・・・・・)



力の入らない手足で這いずって机に近づき、すがるようにそれを手に取る。


それは、大樹から贈られたガーネットの指輪だった。



『この指輪が、いつも僕たちを繋いでくれる。もうなんの心配もいらないよ』



「・・・大樹!」


あたしは最愛の人の名を叫ぶ。


指輪を抱きしめ、胸に強く押し当てた。


ひと筋の光りが差し込んだあたしの心が、あの日の光景を思い出す。



あたしと大樹が初めて出会った、あの日。


運命の恋が始まった、あの日を・・・・・・。