「本当にムカつくー!」


お昼休み、学食にて、私と亜美はお昼ご飯を食べていた。


本日の日替わりメニューは、学食特性オムライス。


赤く色づいたチキンライスに乗っかるは、ふわふわの半熟卵。


デミグラスソースと生クリームが、ふわふわ卵の上を行ったり来たり、まるで虹がかかっているようだ。


そして、ちょこんと軽やかに乗っかったパセリが彩を加える。


ものすごく美味しいのに価格はワンコイン以下という、お金のない高校生にとことん優しいこのコストパフォーマンスも、このオムライスが大好きな理由の一つだ。


私と向かいの席について同じくオムライスを食べていた亜美は首を傾げた。


「何が?」


私がイライラしている理由が分からないとでも言いたそうだ。


「吉崎君!あのサボリ魔だよ」


スプーンで、ザクリ、ザクリと、オムライスを分断すると、スプーンに乗っけて頬張った。


あいつはムカつくけれど、やっぱりオムライスは美味しい。


「でも、今日は睨まれていなかったわよね?」


「今日はね!」


今日は確かに睨まれていない。


なぜ私が吉崎君に苛ついているかといえば、吉崎君の顔を見る度に昨日のことを思い出して仕方がないからだ。


『あんたには俺の言うことを聞いてもらう』


あんな一方的なこと、言うなんて。


「性格、最悪すぎだっつーの!」


嫌悪感丸出しでため息を吐いた。


「そうやって吉崎君、吉崎君ってずっと言ってると、侑也が可哀想よ?愛想尽かされたって文句は言えないわよ?」


亜美は目を細めて言った。若干呆れているようだ。


「ご心配なく!」


オムライスをスプーンで掬いながら言った。


「私達、上手くいってますから」


語尾にハートマークがついたような気がした。


侑也のことを思うだけでニヤケが止まらないって、もしかして恋愛の末期の状態だろうか。


それを自覚したところでどうしようもないことではあるけれど。


「この前だって...」


「ストップ!その先は聞かないわ!ノロケ話なんて、うざくて、うざくて、仕方がないもの。それにここは公共の場よ?お昼時で人の多い学食でノロケ話なんてしないで」


亜美はあからさまに嫌な顔をした。


「へ、へい...」


私は渋々頷くと、スプーンに乗っかったままだったオムライスを口に運んだ。


外気の影響で少し冷めていた。