俺たちは、誰が放ったか分からない火から倒れている男を外に運び、焼けていく本家をただ見つめていた。
いつ棗が戻って来るのか、ただ頭にはそれしかなかった。
その間、俺は棗との出会いを思い出していた。
俺と紘は、篠原の中の幹部の息子だ。
綾は篠原の若。
俺と紘が綾の世話係というか、遊び相手だった。
篠原の会長と女将は優しくて、俺たち会の者たちを、家族だとも言ってくれる人たちだった。
俺たちが13になったころ、棗を篠原の会長が拾って来た。