放課後のチャイムが鳴り響き、同級生たちのざわめきが教室に拡がる。
これからカラオケに行く相談、新しい教師への噂話、早く会いたい恋人のこと…
どれもこれも"甘ったるく"、私にはなんの"刺激"にもならない、他愛のなき会話だった。

つまらなさと、少しの羨ましさの入り交じるため息をつくと、私は部室へ向かうために教室を後にした。
「あ、千尋~。これから部活?」
「うん、久し振りだから掃除とかしようと思って。」
「えぇ、まだ始業式終わったばかりじゃん?さすが委員長様は違いますね~。」
「べつに、そんなんじゃないから。」

級友のいつもの冗談を、少しはにかみながら受け流す。
周りからの推薦と、担任教師の太鼓判を断りきれずに受け持った学級委員長という肩書きも、これで2年目だ。
真面目に役割を果たしながら、級友たちと教師との良い橋渡し役になれていると、我ながら自負があったりする。

「それじゃ、もう行くね。」
親しげに微笑む級友にそう告げると、そそくさと教室を後にする。
皆私を、品行方正な優等生として見ている。
そんな周囲からの眼差しも、委員長という肩書きも、私にとっては不愉快でこそないものの非常にもどかしく、物足りないモノでしかなかった。