清原と涼子は、駅の近くのレストランへ向かった。
 清原の後ろを歩く涼子。清原は見覚えのないジーンズとセーターを着ている。涼子は2人の別れからの年月を改めて感じ、清原が遠い存在に思えた。
 向かい合って座ると、テーブルが小さいせいか、2人の距離が近い。涼子は緊張してなんだか落ち着かなくなってしまった。何回にもわけてコップの水を少しづつ飲んだ。
 清原は自分の頼んだパスタをあっと言う間に食べ終えて、涼子の食べているオムレツも食べたいと言いだした。
「お前の食べてるオムレツおいしそうだな。俺にも食べさせてよ。」
 少し甘えるような清原の口調を聞いて、涼子は付き合っていた時にタイムスリップしたような気持ちになった。
「少しだけだよ。」
「いただき!おいしいな!このオムレツ!」
 涼子の食べていたスプーンを使って、美味しそうにオムレツを食べ始める。
「そんなに食べるの。」
 少しすねたような顔をして涼子は、悪戯っぽく笑う清原の顔を見た。
 2人はたわいもない話をしながら、アルコールを飲んだ。涼子がバリ島へ行った時に買ったブレスレットを渡すと、気に入ったよ・・と言って、つけていたブレスレットをはずして、涼子のブレスレットをつけた。腕を少しあげてブレスレットを眺めている。バリ島へ行ったのは、去年の秋だ。清原に会った時に渡そうと思い買ったものだ。半年も経ってやっと清原の腕につけられたブレスレットだけど、涼子は満足だった。
 ビールを飲みほした清原は、ふっと下を向いてタバコに火をつけた。今まで楽しく話をしていた2人の間に沈黙が流れる。