「どうしてくれるんだよ、彩美」


報道陣が引き、やっと車に乗り込んで空港を後にした。


「久しぶりに会ったのに、冷たいなー」


「ただの一般人じゃないんだ。今後に影響が出るだろ」


彩美は悪びれもなく、おっとりとした雰囲気のまま。

焦っているのは僕だけみたいだ。


「いいの、あのくらいしなきゃ。悪い虫が寄ってくるじゃない?」

「だからって…」


全国放送であの映像が流れると思うと、ゾッとする。


「まさか来てくれると思ってなかった。ありがとう、本当」


空港からさほど遠くない距離に、彩美が滞在するホテルがあるという。


「明日から慌ただしいけど、一ヶ月はいるつもり。ご飯くらいはゆっくり食べようよ。研究のこととか、話したいことはたくさんあるし」


ホテルの駐車場に入り、彩美が連絡先をメモ用紙に書いた。

その時、突然携帯が鳴る。


「…出ないの?」


「…出ないと、後々大変だ」



瀬戸さんからの、電話。

シートベルトを外して、通話を押しながら外へ出た。

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