そして誕生日の一週間ほど前になった日の放課後。
「相沢、ちょっといい?」
「え?うん、なに?」
珍しく橋本くんが声をかけてきた。
ちょっといい?……って、いったいなんだろう。
不思議に思いながらついていくと、人気のない廊下のはしっこで止まった橋本くん。
「ど、どうしたの……?」
こんなところまできて、ただの世間話ではないことは理解できる。
しかも橋本くんは無言だし……。
と、不安に思っていたら。
「……映画」
「映画……?」
「……見に行かない?」
え、え?
なになに、映画行こうってお誘い!?
う、うそー!
嬉しい!
「い、行く!行きたいですっ」
「じゃあ、来週の土曜日に行こう」
橋本くんは私が思わず跳ねて喜ぶと、少し照れ臭そうにしながらそう言った。
「うん、わかった!」
「話はそれだけ。……ごめん、恥ずかったからこんなとこまで連れてきちゃった」
「そっか。ありがとう」
それじゃ。と言う彼に部活頑張ってね!と手を降りつつ、荷物があるので教室に戻る。
映画♪映画♪
映画とか……なんだか超カップルってかんじがしない?
楽しみだなぁ~……来週の土曜日か。
来週の土曜日……土曜日、……ん?
ん??
あれ、その日……私の誕生日だ。
え!!
なにこの偶然!!?
橋本くん、知ってて誘ってくれたのかな?
いや、でもたぶん知らないよね……。
だとしたら、ものすごくタイミングのよすぎるデート……じゃん。
なにこれ……嬉しすぎる。
心臓がばくばくで、とてもじゃないけど落ち着かない。