扉の外に出ると、また唐突に場所が変わっていた。
そもそも、あの小さな祠の中にあんなだだっ広い神殿のような場所があること自体、不自然な話だ。
そこから出た場所が祠の外の風景とまるで違うというのもこれまた不自然な話なのだが、そんなことを考えること自体が馬鹿馬鹿しい。
なにせ、ここは夢の中なのだから。

深い森のようなその場所から一体どこへ行けと言うのか…
剣を手渡されたということは、悪い魔物でも倒せというのか、それとも誰かと果し合い?
いずれにせよ、そういうことは私の最も苦手とする事だ。
早く、このおかしな夢が覚めてくれないものかと祈りながら、私はやみくもに森の中を歩いていた。

しばらく歩くと、小屋のようなものが点在するのが目に映った。
どうやら村のようだ。
てっきり、森の中で何者かに遭遇するのだろうと考えていただけに、何事もなく村に着くことが出来たことに私はほんの少し安堵した。



「あんた…竜神の所へ行くんだね。」

不意に声をかけられ、声の方を見ると、老人が私の方を向いて手をあわせ念仏を唱えている。



「なぜ、そう思われるのです?」

「あんたのその剣じゃ。
それ以外の目的でここを訪れる者はおらんからな。」

「……ということは、もしや、今までにもここに来た人がいたのですか?」

「あぁ、そうだよ。」

「彼らは今どこに?」

「そりゃあ……」

言いかけて、老人ははっとしたように口をつぐむ。



「教えて下さい。
彼らはどうなったんです?」

「わ…わしは何も知らん。」

老人は、小屋の中へ去って行ってしまった。

老人は先程「竜神」と言っていた。
つまり、私は竜神と闘わされるということなのか…?

もしも、竜神の元へ行かずにいたらどうなるのだろう?
そんなことを考えながら、村の中を歩いていると、今度は小さな子供が現れた。
瑞月と呼ばれたあの少年と同じ位の年恰好の子供だ。



「お兄さん、竜の目を取りに行くんだね。」

「竜の目…?」

「だって、その剣…」

「竜の目を取ってどうするんだい?」

「おかしなことを言う人だね。
竜の目を取らないと、お兄さんは殺されてしまうんでしょう?
自分の命が惜しくないの?」

いつの間にかなんとも物騒なことになっているようだ。