「って俺のじゃあでかすぎるなァ」
幹部の中でも大柄な方の原田さんの着物を体に合わせてみるがやはり大きい。私の体格に近かったのは藤堂さんか斉藤さん辺りだろうか。本当なら買えればいいのだが、生憎この時代で使えるようなお金は持っていない。それに外に出ても一人で買いに行ける自信もない。
「とりあえず平助んとこ行ってみるか」
襖を開けて私を見る原田さんに首をかしげると、ほら行くぞと促される。ああ、そうか監視だから離れられないのか。ところどころ傷ができている床を見ながら進んでいたら、どんっと原田さんの背中にぶつかってしまった。
「す、すみません」
顔を附して謝ると原田さんほ私の顔を覗きこむように見てきて思わず身を引いた。
「ははっ!んなこわがんなって。取って食うわけじゃあるめェし。女は笑ってるのが一番だ。泣いてるとき以外は笑え」
正直、そんなの素直に頷けるわけないと思った。それは顔にも出てしまっていたようで眉間に指を当てられてやっと自分が顔をしかめていることに気がついた。
「まァ、こんな状況じゃ笑えねェって思うのが普通だよなァ。でも、こんな時でも笑っとけ。そうすりゃいつかいいことがあるさ」
にかっと笑った原田さんはどこか子供っぽくて私も少しだけ困ったようにわらった。
「お、そうそう!やっぱ女はいいねェ。俺はあんたがここにいてくれること結構嬉しいって思ってんぜ」
「佐之さん、俺の部屋の前でなにしてんの?」
「あ、平助!」
丁度よく部屋の主が帰ってきて原田さんの視線は私から離れる。
…なんだ、今の。こんな状況なのに、いやだからこそだろうか?不覚にもどきっとしてしまった。あの人は天然タラシ決定だと軽く睨むけど藤堂さんと話している彼はなにも気づかない。