暑さも少しずつ和らいできた頃、土方さんと山南さんは警護のため大坂へ向かうことになった。
今日はその見おくりだ。
「椿、なんか元気なくねぇ?」
「そう、見えますか?」
「昼には土方さんと山南さん行っちまうからなァ」
「あの二人がいなくなるからなのか?あの二人がいなくなったらいろいろやり放題だぜ?」
「永倉さん…」
朝餉の時平助さんに横からのぞきこまれて困ったように笑うと原田さんと永倉さんは意外そうにこちらを見た。
「椿君には最近部屋に来てもらうこともあったので私も少し寂しくなりますね」
「な、なんだそれ!?部屋にって…山南さん!」
「政治とか字を習いに行ってたんです」
こくんと口の中の魚を飲み込んでそういうとみんながあぁ、と頷く。
私ももちろん寂しい、けどそれより心配なんだ。大坂へ向かってから山南さんは重い怪我を負ってしまうのだから。
「東條、後で茶を頼む」
「はい」
広間を出るとき土方さんにそう言われて反射で返事をしたけれど、なんかうれしいかも。大坂へ行く前にいっぱい飲んでおきたい、とか?無いか。