この時代の食事は一言でいうと質素。
未来風にいうととってもヘルシーだ。
雑用としておいてもらっているので料理も仕事の一つなのだけれどうまくいかないものだってある。
「火が強すぎる」
「す、すみません!」
そう、火加減がうまくいかないのだ。未来には便利なものがたくさんあって料理は簡単にできてしまうが、この時代となるとまず勝手が違ってくるのだ。はじめの方は全くうまくできなくて火の取り扱い禁止令まで斉藤さんに出されてしまった。このままではいけないと頼んで訓練してもらったのだが、まだうまくいかない時もある。

「あー、今日は失敗か?」
「ちょっと…はい」
黒くなった魚を見て隣に座った永倉さんに話しかけられる。
「総司とか新八のよりは全然ましだって。別に食えるしな」
「藤堂さんっ…!」
「俺も結構好きだぜ?東條の料理。京風のだと味が薄いけど東條のは江戸風だから懐かしい感じがするしな!」
「永倉さんも…!」
嬉しい言葉に感極まってお二人におかずを一品ずつ渡すと飛び上がって喜んでくれた。元々そんなに食べる方でもないのでたまにこうして欲しそうな人に差し入れているのだが、意外なことに斉藤さんも目をぎらつかせて欲しい雰囲気を纏っているのだ。
「…斉藤さんも、召し上がりますか?」
今日は席が隣ということもあって声をかけてみるとぴくりと肩を震わせた。
「いや、それはお前のものだ」
「私はあまり食べないので、よかったら食べてもらえませんか?」
少しだけのぞきこむようにして問えば、喉から絞り出すような声でこたえてくれた。
「…いいのか?」
「はい」
おひたしを斉藤さんに渡すと嬉しそうに微笑むものだから、絶対に口には出せないけれど少しかわいいなんて思ってしまった。
「かたじけない」
「いえ」
私も小さく微笑み返して再び箸を手に取るがどうしても進まない。本当なら白飯一杯ですら口に運ぶのが億劫なくらいだ。お百姓さんに申し訳ないから残さないように食べてはいるんだけど。