教室に戻り、慌てて移動して。


席につくと授業中にも関わらずほっとしてしまった。



ちゃんとお礼言えた……よかったぁ。





お昼休みになって、ちなつちゃんと明乃ちゃんといっしょに中庭でお昼を食べる。



「でも意外だよね」



そう言って明乃ちゃんは手に持っていたクリームパンを食べた。



「何が意外なの?」


「だーかーら!城越くんのことだよ!」



わたしにはよく分からなかったけど、ちなつちゃんは納得したように頷いた。


わたしにも分かるように言ってほしいのですが……



「葵はそういうのに疎そうだもんね」


「疎そうって……」



まぁ、実際そうなのですけど。



「城越って結構クールで、女子にはなんの関わりもないっていうか。
浮いた噂がないのよね」


「そうそう。モテるのに!!」



うんうんと頷く二人。


つまり……



「その、女子と滅多に話したり、関わったりしない城越くんが、わたしを助けてくれるなんて……ってこと?」


「そういうこと」



そういうこと、ですか。



うーん……でも困っている人がいれば見過ごせないって思うのが普通じゃないのかな。


それがたまたまわたしだったってだけで。


わたしは噂の中の城越くんしか知らないけど、そんなに冷たい人には見えなかったなぁ。


そんなことを考えていると、横から視線を感じた。



「え、な、何?」



二人ともニヤニヤ笑っていて。


もしかして何か付いてる?


口元を触ってみるけど何も付いていなかった。