しなやかなはずのリボンが硬度をもって地面に傷を作るが、傷は数秒でなくなった。
 その様子に優希が呆然としているとリボンの先は空中へと移動していく。
 目で追えば、染めた金髪をポニーテールに結んだ黒いつり目の女性がいた。
 リボンの先を手に持ち、強気な笑みを浮かべて見下ろしている。

「あたしがいること忘れないでよね」

 デニムのショートパンツにカラフルなシャツを纏い、束ねた髪を揺らしながら言い放つ。

「凜子(りんこ)ちゃん……」

 笑顔の凜子とは反対に春陽は明るい表情を消して空中を見つめる。

「あの人は……?」

 関係が分からず春陽に問いかける優希。
 凜子はその様子を眺め、やがて鼻で笑った。

「あんたが新入りってわけね」

「――!」

 目の前にリボンが見えた瞬間、優希の視界が大きく揺れた。
 体が不安定になり、後ろからお腹にかけて腕が回されている。
 前方で視界の高さが同じになった凜子が渋い顔をしていた。

「大丈夫?」

「春陽先輩……!」

 羽ばたく音に優希が顔を後ろに向けると、春陽の背中から大きな純白の翼が覗いて見えた。

「これが春陽のキューブの力なんだ」

「――ほんと嫌な羽根。でもあたしだって負けてないから……!」

 風を切ってリボンが迫る。
 しかし、春陽は優希を後ろから抱きしめた形で器用にかわしていく。
 やがて他のメンバー達を見渡せる高さまで上がり、春陽は高度を保ったまま翼を動かしている。
 凜子は距離を置いて再攻撃の機会を狙っているようだった。

「優希ちゃん気をつけて。北上さんや凜子ちゃんはロックキューブを持つ春陽達とは考えが反対の組織、Memories Lock Force(メモリーズ ロック フォース)の人達なの」

「Memories Lock Force……」

 優希は最初にMemories Defense Forceの話を聞いた時、メモリーズキューブと共にロックキューブの名前を聞いていたことを思い出す。
 春陽は凜子の様子から、紅夜と治臣、奏太、薫の様子も見ながら空中を移動する。